陽名

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▼オリジナル小説

Scene.28 ―「継がれた欠片たち」

──ねぇ、あのとき、ほんとうに、わたしはここにいたのかな。 風が、そっと吹いてた。 焼け焦げたものの匂いと、もう誰にも呼ばれなくなった時間のかけらたちが、空気のすき間に溶けて、静かに舞っていた。 遠くで、何かが崩れるような音がして、それはす...
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Scene.27 ―「たしかなものなど、なかったけれど」

──風が、吹いた。 それは、たしかに“誰か”の歩みが残した痕跡だった。無数の声と祈りが溶け込んだ、まだ名もない未来への息吹。 仮設施設の壁を撫でていく風は、どこか懐かしい音を孕んでいた。埃に混じった金属の匂い。遠くの空で反響するかすかな機械...
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Scene.26 ―「残響するものは、何ひとつとして無駄ではなかった」

その部屋は、もう誰も使っていなかった。 空気はわずかに乾き、微細な塵が光の束をゆるやかに漂っていた。古びた配線は壁を這い、断線した神経ケーブルが垂れ下がっている。液晶の割れたホロモニターの表面には、ひび割れた映像が一度だけ点滅して沈黙した。...
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Scene.25 ―「未来という名の、まぼろしだった」

──風が、通りすぎた。 ……その風は、もはや熱も匂いも、誰にも届けようとはしていなかった。  乾いた瓦礫の上をなぞるように、細かく砕けた粒子を巻き上げては、ただ世界の記憶を遠ざけていく。──何もかもが過ぎ去ったあとの空気だった。 崩れかけた...
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Scene.24 ―「名前を拒む者たち」

──風が吹いた。 砕けた骨飾りが、音もなく揺れる。 砂混じりの風が、瓦礫の隙間に落ちた記憶のかけらを撫でていった。風は、焦げた鉄と血のような匂いを運んでいた。その中に、かすかに木の焼けた香りが混じる。骨飾りが燃えた時間の断片。戦いの記憶が、...
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Scene.22a ―「観測不能の果てで、記録は終わる」

【LOG–Δ.H3 : OBSERVATION TERMINATED】【記録者:MIRA・MALIK】【分類:私的観測ログ(封鎖領域/再解析不能)】【警告:観測記録に“私的感情”の混入が検出されました】 それでも、記録しなければならないと思...
クロス・レガシー(完結)

Scene.21 ―「君は、まだ選んでいない」

火花が弾け、床を砕いた拳が空気を裂く。 リク・ロクジョウの動きは、まるで光そのものだった。 かつて“全盛”と謳われた男。だが今、その彼自身すらも超えていた。 放たれる銃弾の精度、義手から繰り出される衝撃、そして《ゼロポイント》を軸にした冷徹...
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Scene.19 ―「空白は、埋まってしまった」

【<REFLOG–Δ.H3> : OBSERVATION DIVERGENCE】【EVA──「構成値異常。認識不能な空白が……収束を開始しました」】 黒曜石のような床が、わずかに呼吸していた。 Ω炉中枢。制御室の最奥、無人の立方空間。すべて...
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Scene.16b ―「君の目に、答えを映して」(後編)

沈黙を破ったのは陽名だった。 彼女は、静かに一歩、ラズの前へと出る。華奢な身体が、重圧に軋む空気の中に立ちふさがった。 その場に、音がなくなった。誰も息を吸えなかった。空調の唸りも、焦げた回路の火花も、耳に届かない。ただ、陽名の小さな靴音が...
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Scene.14 ―「名を持たぬ者へ、名を託す」

【補助観測ログ Δ.H1】【記録端末:統律特命局・戦術支援ユニット《J-JJ_02》】【OBSERVATION STREAM FAILED】【LOGICAL ANCHOR LOST — 再同期不可】【現在位置:不明領域Δ — 簡易観測ノード...
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Scene.12b ―「まぶしすぎて、だれも見えなかった」(後編)

ラズは満面の笑みで拍手していた。「よくやってるね、みんな。ボクの演出に応えてくれて嬉しいよ」「お前!」 ポイゾナスが歯噛みする。「安心して、毒女ちゃん。主役は、ちゃんと舞台に立ってる。もう……希望は、君たちの中にあるよ」 ラズは陽名を指差し...
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Scene.12a ―「まぶしすぎて、だれも見えなかった」(前編)

【<REFLOG–Δ.H1> : MULTI-NODE CONFLICT DETECTED】【EVA──「観測対象が複数地点に分岐。交戦予兆を検知。中継ログ転送開始」】 仮想ネットワーク内。 地下の空気は粘つくように湿り、遠くで金属が軋む音...
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Scene.11 ―「目を閉じたほうが、よく見えた」

【<REFLOG–Δ.H0> : OBSERVATION UNSTABLE … MULTI-NODE ANOMALY DETECTED】【EVA──「都市内異常、小〜中規模クラス:16件並行発生。統一因子なし。記録保持を優先」】 灰色の“空...
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Scene.09 ―「あたたかい嘘は、ほんとうより冷たかった」

【<REFLOG–Δ.H1> : COMPLIANCE DEFERRED … SYS.LOG SYNC 0.91】【補助記録ログ #Δ.H1]】【観測対象因子:未定義 / 干渉率:0.91 / 分岐タグ:UNRESOLVED 】【エリアコー...
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Scene.08 ―「しずかに触れた、手のひらだけが確かだった」

白衣の裾が、扉の向こうをすり抜けた。視界の端に、たしかに“誰か”の輪郭があった。赤い非常灯がわずかに揺れ、その揺らぎの奥に、白くなびく衣が確かに存在した。 アビゲイルの網膜には〈0.3秒先の残像〉が焼きついていた。周囲の空気は、何かが“触れ...
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Scene.05 ― 「星のない空が見ていた」

廃棄された駅ホームに、三つの黒い影が降り立った。 金属の匂いが、鼻の奥にひっかかる。地下の空気は重く、天井を流れるパイプの継ぎ目から滴る水音が、ひときわ静かな空間に溶けていた。非常灯の冷たい白色が、コンクリートの柱を切り裂くように照らし出す...
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Scene.02 ─「この街に、涙の匂いがした」

夜の都市、[トーキョー・シティ]第14街区。 そこは、もはや“街”と呼ぶには、あまりにひび割れていた。崩れた舗装路の断面からは、赤錆びた配管がむき出しとなり、倒壊寸前の高層棟が月面のクレーターのような影を落とす。 非常灯に強制切替された街路...
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