ジャン=ジャック・ジャカール

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Scene.27 ―「たしかなものなど、なかったけれど」

──風が、吹いた。 それは、たしかに“誰か”の歩みが残した痕跡だった。無数の声と祈りが溶け込んだ、まだ名もない未来への息吹。 仮設施設の壁を撫でていく風は、どこか懐かしい音を孕んでいた。埃に混じった金属の匂い。遠くの空で反響するかすかな機械...
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Scene.23 ―「観測断片:Δ.H∞.pre」

──かすかに、風が吹いた。 それは、言葉にも名にもならない“気配”と共に。 誰もいないはずの空間に、揺れる気配がひとつ。 微かな金属音が、擦れるように耳の奥を震わせた。──かつて誰かが残した、名もない痕跡のように。 音の残滓のなかに、彼女は...
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Scene.22 ―「未来は、まだ終わらない」

【<REFLOG–Δ.H3> : OBSERVATION FINALE】【EVA──「最終観測領域、収束。存在位相の変動……感情因子にて補正中」】──時間が、止まっていた。 無数の糸が、星々のように広がっていた。 それは運命のようでいて、た...
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Scene.21 ―「君は、まだ選んでいない」

火花が弾け、床を砕いた拳が空気を裂く。 リク・ロクジョウの動きは、まるで光そのものだった。 かつて“全盛”と謳われた男。だが今、その彼自身すらも超えていた。 放たれる銃弾の精度、義手から繰り出される衝撃、そして《ゼロポイント》を軸にした冷徹...
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Scene.20 ―「これは、対話ではない」

【<REFLOG–Δ.H3> : OBSERVATION COLLISION】【EVA──「交戦確認。各勢力が中枢外郭に集結。観測不能領域、拡大中」】 熱線の閃光が、回廊の曲面を焼いた。 赤く染まる警告灯の残光が、金属と血の匂いを交互に照ら...
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Scene.19 ―「空白は、埋まってしまった」

【<REFLOG–Δ.H3> : OBSERVATION DIVERGENCE】【EVA──「構成値異常。認識不能な空白が……収束を開始しました」】 黒曜石のような床が、わずかに呼吸していた。 Ω炉中枢。制御室の最奥、無人の立方空間。すべて...
クロス・レガシー(完結)

Scene.16b ―「君の目に、答えを映して」(後編)

沈黙を破ったのは陽名だった。 彼女は、静かに一歩、ラズの前へと出る。華奢な身体が、重圧に軋む空気の中に立ちふさがった。 その場に、音がなくなった。誰も息を吸えなかった。空調の唸りも、焦げた回路の火花も、耳に届かない。ただ、陽名の小さな靴音が...
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Scene.16a ―「君の目に、答えを映して」(前編)

【戦術端末:J-JJ_02】【観測ノード:H1……ログ同期中……】「……ん? 今、誰かの観測ログが……?」 ジャン=ジャック・ジャカールの指が止まった。 それは本来、彼に届くはずのものではなかった。無記名の観測ログ。だが帯域には、見覚えがあ...
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Scene.14 ―「名を持たぬ者へ、名を託す」

【補助観測ログ Δ.H1】【記録端末:統律特命局・戦術支援ユニット《J-JJ_02》】【OBSERVATION STREAM FAILED】【LOGICAL ANCHOR LOST — 再同期不可】【現在位置:不明領域Δ — 簡易観測ノード...
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Scene.13 ―「風だけが、通りすぎていった」

<REFLOG–Δ.H1> : OBSERVATION INSTABLE … SIGNAL NOISE DETECTED】【EVA──「戦闘領域において未知因子の干渉。映像ログ一部に乱れ発生。記録継続」】 焦げついた空気が、地下の空間に重く...
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Scene.12a ―「まぶしすぎて、だれも見えなかった」(前編)

【<REFLOG–Δ.H1> : MULTI-NODE CONFLICT DETECTED】【EVA──「観測対象が複数地点に分岐。交戦予兆を検知。中継ログ転送開始」】 仮想ネットワーク内。 地下の空気は粘つくように湿り、遠くで金属が軋む音...
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Scene.11 ―「目を閉じたほうが、よく見えた」

【<REFLOG–Δ.H0> : OBSERVATION UNSTABLE … MULTI-NODE ANOMALY DETECTED】【EVA──「都市内異常、小〜中規模クラス:16件並行発生。統一因子なし。記録保持を優先」】 灰色の“空...
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Scene.08 ―「しずかに触れた、手のひらだけが確かだった」

白衣の裾が、扉の向こうをすり抜けた。視界の端に、たしかに“誰か”の輪郭があった。赤い非常灯がわずかに揺れ、その揺らぎの奥に、白くなびく衣が確かに存在した。 アビゲイルの網膜には〈0.3秒先の残像〉が焼きついていた。周囲の空気は、何かが“触れ...
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Scene.05 ― 「星のない空が見ていた」

廃棄された駅ホームに、三つの黒い影が降り立った。 金属の匂いが、鼻の奥にひっかかる。地下の空気は重く、天井を流れるパイプの継ぎ目から滴る水音が、ひときわ静かな空間に溶けていた。非常灯の冷たい白色が、コンクリートの柱を切り裂くように照らし出す...
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Scene 03 ―「正しさだけが歩いている」

ガンマチームが第4衛星ドーム[カナメ]に到着したのは、薄曇りの朝だった。 メインドームから隔たれたその支部都市は、半球型のアクリル天蓋を通して仄かに陽光を受け止めていた。 静まり返った連絡地下道を抜けた先に、[統律特命局]第4方面支部の重厚...
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Scene.01 ―「砕けた命の形」

「……で? また“調査任務”ってやつか?」 リョウが、後部座席でポテチの袋をあさりながらぼやいた。黒いスーツ、黒いネクタイに白いシャツを着た大柄で筋肉質な東洋系の男性で、特注の黒いチタン製サングラスをかけている。 黒スーツの襟元には、スナッ...
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