第1部『404_NOT_FOUND』INTERRUPT_06|REMAP

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クロス・バグ三部作(絶賛連載中)

 中央物流センターへ向かっていた五つの反応が二つに分かれた。

【SUBJECT GROUP:5】
【ROUTE DIVISION:DETECTED】
【GROUP A:3】
【GROUP B:2】

 オリヴィア・オコネルは旧保守図と現在の物流設備記録を重ねた。

 五人が自発的に別方向へ移動した形跡はなかった。

 搬送設備が切り替えられていた。

 隔壁も閉鎖されていた。

 手動経路にも操作記録が残っていた。

 変異市民による設備操作も確認された。

 複数の処理が短い時間差で続いていた。

【ROUTE CHANGE:EXTERNAL FACTOR/PROBABLE】
【CENTRAL-01 CORRELATION:HIGH】

 中央物流区画で確認されている局地命令網も変化していた。

 数分前より命令の伝達間隔が短くなっていた。

【COMMAND RELAY DELAY:DECREASING】
【CONNECTED SUBJECTS:INCREASING】
【LOCAL CONTROL DENSITY:RISING】

 以前は一体が動いた後で別の一体が続いていた。

 現在は一つの設備操作が終わる前に次の配置が始まっていた。

 リピーターが中継していた。

 ロストが位置を変えていた。

 ブーステッドが通路を塞いでいた。

 物流設備も動きに合わせて開閉していた。

 [世界政府]の現在図へ反映された時には一つ前の状態になっていた。

 オリヴィアは位置表示を止めた。

「現在位置ではなく変更履歴を出して」

 三浦主任が処理を止めた。

「追跡を切りますか?」

「位置だけ」

 オリヴィアは表示条件を変更した。

【TRACKING MODE:STATE TRANSITION】
【CURRENT POSITION:SECONDARY】
【SYSTEM CHANGE HISTORY:PRIMARY】

 人物を示していた点が消えた。

 変化した設備と経路だけが残った。

 GROUP Aの反応を既知記録と照合した。

【GROUP A:3】
【SPROCKET:HIGH CORRELATION】
【CHRONIAS:HIGH CORRELATION】
【THIRD SUBJECT:UNRESOLVED】

 未確定反応はヴァレンとの相関が高かった。

 GROUP Bも照合した。

【GROUP B:2】
【AKIYAMA AKIRA:HIGH CORRELATION】
【AIRIE:HIGH CORRELATION】

 現在参照できる範囲では事件以前の人物記録を確認できなかった。

 今回のトーキョー・シティ侵入後に名前が取得されていた。

 生体反応も記録されていた。

 戦闘時には天然ネクスと一致する高出力が確認されていた。

 [スペリオルズ]との行動も継続していた。

【SUBJECT:AIRIE】
【FORMAL AFFILIATION:UNCONFIRMED】
【ASSOCIATION:SPROCKET/HIGH】
【NEX ORIGIN:NATURAL/PROBABLE】
【PREVIOUS CIVIL RECORD:NO MATCH】
【LEGAL IDENTITY:UNRESOLVED】

 オリヴィアは法的身元の欄を空白のまま残した。

 記録が存在しない部分を推測で埋める必要はなかった。

 中央物流区画の外縁で新しい反応が出た。

【UNREGISTERED ENTRY:DETECTED】
【OUTER MAINTENANCE SECTOR】
【SUBJECT COUNT:1】

 一つの保守センサーが反応した。

 離れた位置にある別のセンサーもほぼ同時に反応した。

 三つ目までの時間差も通常の人間には成立しなかった。

【NODE 21:ACTIVE】
【NODE 24:ACTIVE】
【NODE 31:ACTIVE】
【MOVEMENT VELOCITY:ABOVE LOCAL TRACKING LIMIT】

 三浦主任が映像記録を開いた。

「一枚だけ残っています」

 黒い高速スーツが画面の端に映っていた。

 ゴーグルで顔は確認できなかった。

 身体の輪郭も移動によって崩れていた。

 人物認証に使える情報は不足していた。

「動きで探して」

「現行記録だけですか?」

「内部記録まで」

【MOVEMENT PATTERN:ARCHIVE SEARCH】

 通常の[世界政府]記録では一致しなかった。

 公開対象から外された旧作戦記録から一件だけ高い相関が返った。

【RESTRICTED ARCHIVE:MATCH CANDIDATE】
【ACCESS LEVEL:INTERNAL】

 オリヴィアが認証を通した。

 旧パース・シティの記録が開いた。

 荒野を高速で横切る人影が映っていた。

 映像の端には白と水色の残光が残っていた。

 一つの人物反応が複数の戦闘区域を短時間で往復していた。

 記録映像は鮮明ではなかった。

 能力測定も完全ではなかった。

 現在のトーキョー・シティで取得した加速特性と減速特性は一致していた。

【ARCHIVED SUBJECT:MACHLINE】
【AFFILIATION:[スペリオルズ]】
【MOVEMENT PATTERN MATCH:HIGH】
【IDENTITY CORRELATION:HIGH】

「マッハライン」

 オリヴィアは現在記録へ名前を追加した。

 高速反応はGROUP Bへ接近していた。

【GROUP B】
【SUBJECT COUNT:2 → 3】
【NEW SUBJECT:MACHLINE/HIGH CORRELATION】

 三浦主任が表示を確認した。

「[スペリオルズ]が増えました」

「ええ」

「予定していた合流でしょうか?」

「分からない」

 オリヴィアはマッハラインの侵入経路だけを保存した。

「予定だったことにはしないで」

 オリヴィアの個人端末に秘匿回線が開いた。

【SECURE SYNC:CONNECTED】
【TARGET:Mr.X】

 共有監査画面には何も表示されなかった。

 先ほど送った秘匿記録への応答だった。

『確認した』

「全部?」

『全部だ』

 オリヴィアは一般監査から切り離した記録を開いた。

【SUBJECT:SPROCKET】
【LEGACY AUTHORIZATION:PARTIAL MATCH】
【ACCESS ATTEMPT:NONE】
【PROJECT INTER-FACE】
【EXTERNAL ACCESS PATH:RESPONSE DETECTED】

「PROJECT INTER-FACEへの経路が応答した」

『接続したのか』

「していない」

『アクセス要求は』

「ない」

『本人は』

「探していない」

 短い沈黙が入った。

「それが問題よ」

『再現性は』

「まだ足りない」

『スプロケットを生きたまま確保しろ』

 返答は早かった。

 オリヴィアは画面から視線を動かさなかった。

「確認を待たないの?」

『待つ必要はない』

「PROJECT INTER-FACEへの反応だけで?」

『それだけではない』

 オリヴィアの指が止まった。

「何を知ってるの?」

『今必要な情報は送った』

「送っていないから聞いてる」

『確保を優先しろ』

「答えになってない」

『必要な答えだ』

 オリヴィアはスプロケットへ割り当てた監査資源を表示した。

 他の対象より多くの処理能力がすでに割り当てられていた。

『君も優先している』

「認証異常を追ってるからよ」

『そう記録している』

 オリヴィアは表示を閉じなかった。

「あなたは何を知ってるの?」

『今必要な情報は同期している』

「同期していない情報がある」

『ある』

 Mr.Xは否定しなかった。

「私をトーキョー・シティ担当へ置いたのも関係してる?」

『理由の一つだ』

「何が起きるか知ってた?」

『知らない』

「何かが起きる可能性は考えてた」

『そうだ』

「だから私を置いた」

『適任だった』

「それも理由の一つ?」

『そうだ』

 オリヴィアは追及を止めた。

 Mr.Xがスプロケットの出現を予測していた証拠はなかった。

 トーキョー・シティで何らかの異常が表面化する可能性は考えていた。

 その処理役として自分を配置した。

 確認できるのはそこまでだった。

『回収順位を送る』

【SPECIAL RECOVERY DIRECTIVE】
【AUTHORIZED BY:Mr.X】
【OPERATION PRIORITY:UPDATED】

 最上段へスプロケットが入った。

【PRIORITY 01】
【SUBJECT:SPROCKET】
【CLASSIFICATION:NATURAL NEX】
【RECOVERY CONDITION:ALIVE】
【STATUS:TOP PRIORITY】
【PRIORITY 02】
【SUBJECT:CHRONIAS】
【CLASSIFICATION:NEX】
【TEMPORAL RESPONSE ANOMALY:HIGH】
【RECOVERY CONDITION:ALIVE】
【PRIORITY 03】
【SUBJECT:MACHLINE】
【AFFILIATION:[スペリオルズ]】
【CLASSIFICATION:NATURAL NEX】
【RECOVERY CONDITION:ALIVE】
【PRIORITY 04】
【SUBJECT:AIRIE】
【FORMAL AFFILIATION:UNCONFIRMED】
【ASSOCIATION:SPROCKET/HIGH】
【NEX ORIGIN:NATURAL/PROBABLE】
【PRIORITY 05】
【SUBJECT:AKIYAMA AKIRA】
【CURRENT CLASSIFICATION:SPECIAL REMNANT CANDIDATE】
【RECOVERY CONDITION:ALIVE】
【PRIORITY 06】
【SUBJECT:CENTRAL-01】
【SELF-DESIGNATION:GAME MASTER】
【LEGAL IDENTITY:UNRESOLVED】
【CURRENT CLASSIFICATION:SPECIAL REMNANT】
【RECOVERY CONDITION:ALIVE】

 ヴァレンだけが順位外に残された。

【SUBJECT:VAREN】
【IDENTITY:PARTIAL】
【CLASSIFICATION:UNRESOLVED】
【RECOVERY ORDER:PENDING】

 オリヴィアは一覧を上から下まで確認した。

 回収対象そのものに異論はなかった。

 天然ネクスがいた。

 特殊な能力反応を持つ個体もいた。

 通常分類に収まらないレムナントもいた。

 生存状態で確保して調査へ回す理由は成立していた。

 問題は順位だった。

「スプロケットだけ別扱いね」

『そうだ』

「PROJECT INTER-FACEだけが理由?」

『違う』

「他は?」

『今は必要ない』

「便利な答え」

『正確な答えだ』

 回線が切れた。

【SECURE SYNC:CLOSED】

 オリヴィアは通信履歴を消さなかった。

 PROJECT INTER-FACEの情報も一般監査系へ戻さなかった。

 公的な作戦命令へ使用できる項目だけを抽出した。

【SUBJECT:SPROCKET】
【LEGACY SYSTEM RESPONSE:ANOMALOUS】
【SYSTEM INTERACTION RISK:HIGH】
【LIVE RECOVERY:MANDATORY】
【RECOVERY PRIORITY:01】

 三浦主任が変更を確認した。

「最優先ですか?」

「ええ」

「旧A.R.K.の反応が理由?」

「理由の一つ」

 三浦主任はそれ以上聞かなかった。

 オリヴィアは正式作戦系統へ回収順位を送った。

【NEX HOUNDS】
【RECOVERY PRIORITY:UPDATED】
【DIRECT TERMINATION:PROHIBITED】
【ALL DESIGNATED SUBJECTS:LIVE RECOVERY】

 リッジから応答が返った。

『更新を確認した』

「現在の回収対象を安全区域へ移送して」

『その後はスプロケット』

「最優先」

『了解』

「生存状態で」

『全対象が生存回収』

 オリヴィアは中央物流区画の状態を確認した。

「直接進入はまだ待って」

『理由は』

「命令網の変化が速い」

『安全経路ができたら動く』

「それでいい」

 通信が切れた。

 リッジにPROJECT INTER-FACEを伝える必要はなかった。

 現場に必要なのは対象と条件と開始時点だった。

 高速反応がGROUP Bへ到達した。

【GROUP B】
【SUBJECT COUNT:3】
【MACHLINE:HIGH CORRELATION】

 GROUP Bの相関情報が更新された。

【AIRIE:HIGH CORRELATION】
【AKIYAMA AKIRA:HIGH CORRELATION】
【MACHLINE:HIGH CORRELATION】

 マッハラインが加わった直後からCENTRAL-01側の配置変更回数が増えた。

 ロストが通路へ移動した。

 配置が完了する前に障害物の位置が変わった。

 リピーターが扉へ向かった。

 到達前に固定機構だけが外された。

 別の進路へ変異市民が配置された。

 高速反応はその外側を回った。

【CENTRAL-01:ROUTE CONTROL/ACTIVE】
【FIELD DEVIATION:REPEATED】
【CORRELATED SOURCE:MACHLINE】

 マッハラインは命令網へ侵入していなかった。

 設備を支配している形跡もなかった。

 配置が完成する前に物理的な状態だけを変えていた。

 旧パース・シティの記録と一致していた。

 速さそのものが相手の処理時間を奪っていた。

【ARCHIVED BEHAVIOR:CONSISTENT】

 CENTRAL-01側が再配置した。

 マッハラインが先に動いた。

 再配置が始まった。

 高速反応が移動した。

 別の配置が始まった。

 高速反応が再び移動した。

 完成した状態が維持される時間は短くなっていた。

【FIELD STATE LIFETIME:DECREASING】
【COMMAND RESPONSE CYCLE:SHORTENING】

 オリヴィアは未来位置の自動予測を止めた。

【SUBJECT ROUTE FORECAST:SUSPENDED】

 予測するより発生した変化だけを残す方が正確だった。

 二つの集団が再び近づいた。

【GROUP A:3】
【GROUP B:3】
【DISTANCE:DECREASING】

 中央集積区画で複数の設備が同時に反応した。

【GROUP MERGE:DETECTED】
【SUBJECT COUNT:6】

 六人の相関を更新した。

【SPROCKET:HIGH CORRELATION】
【AIRIE:HIGH CORRELATION】
【AKIYAMA AKIRA:HIGH CORRELATION】
【VAREN:PARTIAL】
【CHRONIAS:HIGH CORRELATION】
【MACHLINE:HIGH CORRELATION】

 六人は同じ方向へ進み始めた。

 目的地は中央中継設備と一致していた。

 CENTRAL-01側の命令網とは構造が違っていた。

 六人をまとめる共通信号はなかった。

 一つの神経反応を中心にした接続もなかった。

 一人から他の五人へ送られる命令も確認できなかった。

【SUBJECT GROUP:6】
【COORDINATED ACTION:DETECTED】
【CENTRAL COMMAND SOURCE:NONE】
【NEURAL COMMAND LINK:NONE】

 三浦主任が六人の反応を確認した。

「指揮役は?」

「出ていない」

「でも同じ目的で動いています」

「それと指揮は別」

 誰が何を決めたのかまでは確認できなかった。

 音声記録も断片的だった。

 高速反応は配置を乱していた。

 高出力反応は前方へ移動していた。

 秋山明は設備変化の直前に位置を変えていた。

 クロニアスの弱い生体反応は集団中央から大きく外れなかった。

 ヴァレンもクロニアスの近くにいた。

 スプロケットだけが命令中継へ接近していた。

 オリヴィアは統率方法を補完しなかった。

【COORDINATION METHOD:UNRESOLVED】

 中央管制室周辺で命令中継が一つ消えた。

【LOCAL COMMAND RELAY:INTERRUPTED】

 三浦主任が発信源を確認した。

「CENTRAL-01は残っています」

「発信も?」

「継続しています」

【CENTRAL-01:COMMAND SOURCE/ACTIVE】

 周辺区画では命令網が維持されていた。

 一つの区画だけ命令が届いていなかった。

【LOCAL NETWORK:DISCONNECTED】
【ALTERNATE COMMAND SOURCE:NONE】

 [世界政府]側から遮断処理は実行していなかった。

 設備故障も記録されていなかった。

 発生地点はスプロケットの反応と重なっていた。

【SPROCKET CORRELATION:HIGH】

 オリヴィアは詳細ログを開いた。

 外部から入力されていた命令だけが消えていた。

 新しい命令は追加されていなかった。

 CENTRAL-01の支配がスプロケットの支配へ置き換わった形跡もなかった。

【COMMAND TAKEOVER:NOT DETECTED】
【COMMAND REPLACEMENT:NONE】
【NETWORK SEVERANCE:CONFIRMED】

 統一行動を失った変異市民は別々の動作へ戻っていた。

 一体は歩き始めた。

 一体はその場で止まった。

 一体は同じ設備操作を繰り返した。

 別の一体は壁を押し続けていた。

 共通した目的は失われていた。

【CENTRAL CONTROL:NONE】
【INDIVIDUAL PATTERN:PARTIAL RESTORATION】

「奪ってない」

 三浦主任がオリヴィアを見た。

「何をですか?」

「命令網」

 オリヴィアは切断前後のログを並べた。

「触れてるけど置き換えてない」

「できなかった可能性は?」

「ある」

「しなかった可能性も?」

「ある」

 オリヴィアはどちらも確定しなかった。

【NETWORK ACCESS:CONFIRMED】
【COMMAND SEVERANCE:CONFIRMED】
【COMMAND REPLACEMENT:NOT DETECTED】
【CONTROL INTENT:UNRESOLVED】

 Mr.Xが能力を危険だと判断した理由は理解できた。

 スプロケットは複数個体へ広がった命令網へ接触していた。

 局地的とはいえ命令経路そのものを切断していた。

 現在確認されている機械系統への干渉特性は、通常のネクス能力分類だけでは説明しきれなかった。

 旧A.R.K.設備も彼女へ反応していた。

 PROJECT INTER-FACEへの経路も応答していた。

 危険という評価は成立していた。

 だが、Mr.Xが最優先確保を決めたのは命令網切断を確認する前だった。

 PROJECT INTER-FACEへの異常応答を報告した直後には判断が終わっていた。

 それ以前にもMr.Xはスプロケットに関する情報を持っていた。

 オリヴィアは既存記録を開いた。

【SUBJECT:SPROCKET】
【PREVIOUS DATA:LIMITED】
【NEX CLASSIFICATION:NATURAL】
【ABILITY DATA:PARTIAL】
【FIELD RECORDS:FRAGMENTARY】

 記録は多くなかった。

 過去の作戦で確認された姿が残っていた。

 機械系統への特殊な接触も記録されていた。

 [スペリオルズ]との行動記録もあった。

 断片的な戦場データも保存されていた。

 今回取得した情報の方がすでに詳細だった。

 旧A.R.K.への部分認証があった。

 停止設備の再起動も確認された。

 命令網への接触も発生した。

 局地切断まで確認された。

【CURRENT ANOMALY CORRELATIONS】
【LEGACY AUTHORIZATION RESPONSE】
【SYSTEM INTERACTION】
【NETWORK ACCESS】
【COMMAND SEVERANCE】

 危険性は確認できた。

 最優先にする理由のすべては確認できなかった。

 オリヴィアは検索範囲を広げた。

【SUBJECT SEARCH:SPROCKET】
【ARCHIVE DEPTH:INCREASED】

 関連ファイルが並んだ。

 どれも断片的だった。

 直接つながる記録はなかった。

【REFERENCE CHAIN:INCOMPLETE】
【IDENTITY BACKGROUND:INSUFFICIENT】

 Mr.Xと同じ情報を見ているつもりだった。

 少なくとも自分がアクセスできる記録についてはそうだった。

 同じ記録だけではMr.Xと同じ判断には到達できなかった。

 彼が別の情報を持っている可能性は高かった。

 オリヴィアは可能性を確定事項には変えなかった。

【PRIORITY BASIS:PARTIAL】
【ADDITIONAL AUDIT:ACTIVE】

「追加監査を継続」

 三浦主任が入力した。

「最優先回収対象のままですか?」

「ええ」

「監視も続ける?」

「続けて」

「両方?」

「矛盾する?」

「しません」

「ならそのまま」

 中央物流センターから警告が入った。

【CENTRAL-01】
【COMMAND LOAD:RISING】
【NEURAL STRESS:CRITICAL】

 命令源の生体負荷が急激に上昇していた。

 これまで命令伝達には時間差が存在していた。

 一体へ送られていた。

 中継されていた。

 次の個体へ渡されていた。

 異なる命令が順番に広がっていた。

 安全制御が神経負荷と伝達速度を抑えていた。

 その制御へ解除要求が出た。

【SAFETY LIMIT:RELEASE REQUESTED】

 三浦主任が処理を確認した。

「本人からです」

 解除要求は受理されていた。

 しかし、最終確認は実行されていない。

【SAFETY LIMIT:RELEASE REQUESTED】
【FINAL CONFIRMATION:PENDING】
【SEQUENTIAL RELAY CONTROL:ACTIVE】

「止まっています」

「どこで?」

「最終確認です」

 オリヴィアは命令源の生体反応を開いた。

【COMMAND LOAD:78%】
【NEURAL STRESS:CRITICAL】

 安全制限はまだ残っている。

 それでも、解除可能な経路自体は開かれていた。

「解除されたら?」

 三浦主任が処理予測を開いた。

【SIMULTANEOUS COMMAND:AVAILABLE】
【NEURAL FAILURE RISK:HIGH】

「中継の順番を無視できます」

「全部へ同時に?」

「理論上は」

 オリヴィアは予測結果を確定情報へ入れなかった。

【SAFETY OVERRIDE:PENDING】

 安全制限が残っている現在でも、中央物流区画の状態変化は監査処理を上回り始めていた。

 都市図が更新された。

 更新が終わる前に別の区画が変化した。

【MAP UPDATE:RUNNING】
【STATE CHANGE:DETECTED】
【MAP UPDATE:RESTARTING】

 再計算が始まった。

 完了前に新しい変化が入った。

【STATE CHANGE:DETECTED】
【MAP UPDATE:RESTARTING】

 三浦主任が画面を見た。

「追いつきません」

「予測を切って」

「全部ですか?」

「中央物流系だけ」

 三浦主任が自動予測を停止した。

【CENTRAL LOGISTICS PREDICTION MODEL:OFFLINE】
【VERIFIED STATE ONLY:ACTIVE】

 予測線が消えた。

 確認済みの状態だけが残った。

 オリヴィアは復旧班の配置を開いた。

「中央物流へ入っている班を二ブロック戻して」

「作業中の設備は?」

「固定できる場所まで固定して退避」

 無人機の位置も表示した。

「中央周辺の三機を分岐点へ」

「追跡させませんか?」

「固定監視に変更」

「了解」

 医療搬送班の待機位置を開いた。

「南側待機点を一つ下げて」

「負傷者回収ですか?」

「まだ違う」

「待機を継続?」

「生体反応が崩れた時に動ける位置へ」

 [世界政府]防衛部隊の配置も確認した。

「防衛線は維持」

 三浦主任が中央物流側を示した。

「寄せませんか?」

「寄せたら巻き込まれる」

「ネクス・ハウンズは?」

「待機を維持」

 オリヴィアは作戦条件を更新した。

【NEX HOUNDS:OPERATION UPDATE】
【RECOVERY PRIORITY:MAINTAIN】
【CURRENT RECOVERED SUBJECTS:SECURE TRANSFER FIRST】
【CENTRAL COMMAND AREA:DIRECT ENTRY/HOLD】
【INTERCEPTION:SAFE ROUTE REQUIRED】

 リッジから通信が入った。

『確認した』

「優先順位は変えない」

『スプロケットが最優先』

「ええ」

『生存回収』

「絶対条件」

『安全経路ができたら動く』

「こちらからも送る」

『了解』

 通信が切れた。

 中央物流センターの状態が再び変化した。

【TOKYO CITY OPERATION MAP】
【WORLD GOVERNMENT CONTROL:PARTIAL】
【CENTRAL-01 COMMAND NETWORK:ACTIVE】
【LOCAL CONTROL DENSITY:RISING】
【SAFETY LIMIT:RELEASE PENDING】
【COMMAND-DISCONNECTED SECTOR:1】
【LEGACY NETWORK:PARTIAL】
【SUBJECT GROUP:6】
【CURRENT LOCATION:UNRESOLVED】
【PREDICTION RELIABILITY:LOW】

 現在位置は確定できなかった。

 誰が状態を変えたのかは追跡できていた。

 CENTRAL-01は命令網の再配置を続けていた。

 マッハラインは完成する前の配置を崩していた。

 六人は中央命令源を持たないまま再合流していた。

 スプロケットは命令網へ接触していた。

 スプロケット自身の命令へ置き換えた形跡はなかった。

 局地的な命令網だけが切断されていた。

 Mr.Xはスプロケットを最優先回収対象へ変更した。

 PROJECT INTER-FACEへの反応は一般作戦系統から隔離されたままだった。

 どれも確認できた事実だった。

 一つの答えへまとめるだけの情報はまだなかった。

 オリヴィアはスプロケットの秘匿記録を開いた。

【SUBJECT:SPROCKET】
【RECOVERY PRIORITY:01】
【RECOVERY CONDITION:ALIVE】
【LEGACY AUTHORIZATION RESPONSE:CONFIRMED】
【PROJECT INTER-FACE CORRELATION:RESTRICTED】
【COMMAND SEVERANCE:CONFIRMED】
【PRIORITY BASIS:PARTIAL】
【ADDITIONAL AUDIT:ACTIVE】

 最優先回収という結論は変えなかった。

 危険という評価も消さなかった。

 確認できていない部分も埋めなかった。

 中央物流センターの状態が再び更新された。

【MAP STATUS:REMAP REQUIRED】

 オリヴィアは再計算を実行した。

 都市の盤面も変わっていた。

 回収対象の順位も変わっていた。

 Mr.Xから共有されている情報の意味も変わっていた。

 スプロケットだけは監査上の位置づけをまだ終えられなかった。

 オリヴィアはその項目を閉じなかった。

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