【来る】RE-3144

作品データ

あらすじ

オカルトライターの野崎の元に田原が訪れ、身の回りで超常現象が起きて妻と幼い一人娘に危害が及ぶとして相談に来る。
野崎は霊媒師の血を引くキャバ嬢の真琴とともに調査を始めるが、田原家に憑いている「何か」は想像をはるかに超える強力なモノだと知る。
民俗学者の津田から「何か」の正体が民間伝承に由来するバケモノだと知り、野崎と真琴は必死に対抗策を探すのだった。

登場人物＆出演者

・野崎和浩（演：岡田准一）

近年の出演作に『ザ・ファブル』、『散り椿』があります。

フリーのオカルトライター。基本的に風俗やヤクザなど、なんでも記事するような人物。

津田に紹介される形で秀樹と引き合うと、霊媒師のような事ができる真琴の元へ行く。
過去に恋人との間に子供ができたが、中絶をさせてしまい、それ以降はトラウマになる。
真琴に対し唯一親身になっている状態で、消えた彼女と知紗を取り戻すべく琴子に協力。
最後は痛みを感じて「あれ」の誘惑を断ち切り、知紗を取り戻しコンビニで買い物した。

・比嘉真琴（演：小松菜奈）

近年の出演作に『閉鎖病棟/それぞれの朝』、『さよならくちびる』があります。

キャバ嬢。沖縄に古くいるユタの血を引いている。荒んだ生活で体中に大小の生傷がある。

独学で霊媒の術を身につけているが、理屈的な事は分からず、あくまで感覚的にやる。
秀樹に勘違いするような言葉を言ってしまい、それを反省して彼の家でお祓いを敢行。
中途半端な術で「あれ」を逆に怒らせ大ケガを負い、結局は姉がやって来て引き受ける。
最後は「あれ」に知紗を返そうとした姉の反対を押し切り、結果的に引き取った。

・田原知紗（演：志田愛珠）

本作が長編映画デビュー作となります。

秀樹と香奈の一人娘。小さい頃に秀樹がボンヤリ覚えていた「チサ」の名前をつけられた。

生まれた時から他の子供と比べて体が弱く、すぐに病院へ行くような状態が続く。
両親の承認要求を満たす為だけに生まれてきたような存在で、結局は愛されていなかった。
そのせいで「あれ」が一番の友だちになってしまい、その結びつきが危険な状態になる。
最後は琴子に返されようとしたが、和浩と真琴の願いで現世に留まる事となった。

・田原香奈（演：黒木華）

代表作に『小さいおうち』、『母と暮らせば』があります。

秀樹の妻。元々はスーパーのレジ係として働いていたが、秀樹との出会いで生活が一変する。

シングルマザーの元で育ったせいで家族の温かさを知らず、秀樹との実家で居づらくなる。
念願だった子供を授けると、秀樹がブログに熱中している間に育児ノイローゼとなっていく。
秀樹が死んで近づいてきた津田に心を許してしまうと、「あれ」を宿す彼に洗脳される。
最後は知紗を守ろうとしたが、「あれ」に追い詰められても抵抗するも殺されてしまった。

・田原秀樹（演：妻夫木聡）

近年の出演作に『決算!忠臣蔵』、『パラダイス・ネクスト』などがあります。

香奈の夫。大手製菓会社に勤めている。スーパーのレジ係だった香奈と出会って結婚する。

リア充という言葉の通りに人生を謳歌し、育児する事をブログにして人気を博すようになる。
実は知紗が生まれて以降、香奈との夫婦仲は冷め切っていて、ブログを書く事が目的に。
「あれ」に連れて行かれる事に怯えながらも、琴子の言う通りに儀式をするも利用された。
最後は「あれ」に殺されてしまい、セツ子のお祓いによって死んだ事を知って昇天した。

・津田大吾（演：青木崇高）

代表作に『おっぱいバレー』、『るろうに剣心』シリーズなどがあります。

民俗学者。秀樹とは大学時代からの親友。香奈と結婚した秀樹を羨ましがっていた。

秀樹と同じぐらい何事も軽い方向に考えるが、悩んでいた彼の為に野崎を紹介してもらう。
「あれ」によって振り回される秀樹を横目に香奈の心を掴み、彼女と肉体関係を持つ。
実は秀樹のモノを奪う事を最大の楽しみにしていて、なぜか「あれ」に取り憑かれていた。
最後は完全に「あれ」に乗っ取られてしまい、体中に切り傷を負って死亡していた。

・逢坂セツ子（演：柴田理恵）

代表作に『スーパーの女』、『化粧師/KEWAISHI』などがあります。

テレビにも出演していた有名なタレント霊媒師。近年メディアへの露出が減ってきている。

左目は白目になっていて、どこか胡散臭い雰囲気を持つも琴子から紹介される実力者。
秀樹を霊視していた時に「あれ」がやって来ると、強すぎる力に屈して右腕を失う事に。
最終決戦を前にして秀樹のマンションに行き、成仏しなかった彼に真実を告げて昇天させた。
最後は壮大なお祓いに参加して仲間が倒れる中でも祈り続け、「あれ」により力尽きた。

・比嘉琴子（演：松たか子）

近年の出演作に『ラストレター』、『峠/最後のサムライ』などがあります。

真琴の姉で日本最強の霊媒師。真琴と同じくユタの血を引くが、自分だけの力だと自負する。

真琴と同じく体中に生傷だらけで、左目にも大きな傷を負って普段はサングラスをしている。
国のお偉い方々と面識があって、壮大なお祓いの為に何かと力を借りて行っている。
和浩と同じく他人を嫌うが、妹である真琴の事を悪く言いながら誰よりも心配していた。
最後は「あれ」と対峙して壮大なお祓いを行い、和浩と真琴の願いで知紗を助ける事になる。

感想

［個人的な評価］

本作は『第22回日本ホラー小説大賞』にて原作となるホラー小説「ぼぎわんが」が大賞を受賞しています。
その後、タイトルを「ぼぎわんが、来る」に改題し、本作に登場する霊媒姉妹を主人公にした「比嘉姉妹シリーズ」の第1作目となっています。
残念ながら原作は未読だが、個人的に邦画ナンバー1だと思っている『嫌われ松子の一生』の中島哲也が監督だと知って興味を持ちました。
中島哲也監督は悲惨な物語を軽妙なミュージカル風にした『嫌われ松子の一生』はとても衝撃を受けた作品でした。
その後も『告白』や『渇き。』というシリアスな作品でも、緊迫したシーンの連続でエンターテイメントとは違った方向性を生み出しています。
そんな中島哲也監督の最新作でホラー映画という事なら、どのような化学変化が起きるのか楽しみにしていました。
結果として、さすがは中島哲也監督という感じで普通のホラー映画とは違った方向性を示しており、更に予想の斜め上を行くラストでした。
物語の中心にいる秀樹は中身のないメッキのような人生を送っていて、前半は幸せなどうでもいいの連続でちょっと飽きてしまう。
いわゆるリア充というヤツで、会社でも上手くいって、プライベートでも上手くいって、多くの仲間に囲まれるような絵に描いた人生を送っている。
ホラー映画で幸せな家族のシーンなど退屈の何モノでもないが、これは徐々に崩壊していく為の伏線としてガマンして鑑賞しなければならない。
物語が本格的に動き出すのは霊媒師の比嘉琴子が登場してからであり、それまでが前菜という感じで多少は静かに進んでいます。
やはり、本作で最も盛り上がるのはラストで行われる様々な霊媒師を呼んで壮大なお祓いをするシーンだろうと思います。
途中からホラー映画だった事を忘れさせるようなシーンの連続で、自分は一体何を観ているのか一瞬分からなくなってしまいます。
ただ、あまりにも予想の斜め上に行きすぎて、完全に面白さが伝わってこなかったです。
なんだか既存のホラー映画から脱却しようとした結果、ごちゃ混ぜな内容になってしまい、ラストも曖昧にするしか終わらせる事ができなかった印象があった。
本作ではタイトルが示すように何かが来るワケだが、その正体をハッキリと描写しない事で不気味さを演出しています。
ですが、ハッキリと答えが欲しいタイプなので、残念ながら本作は謎を残しすぎていて消化不良になってしまった。
圧倒されるお祓いのシーンはいいのですが、ここら辺の収拾を最初から捨てている構成はどうにも好きじゃないです。
中島哲也監督は『嫌われ松子の一生』でお気に入りになりましたが、残念ながらこの作品を超えるほどの面白さは感じなかったです。