作品データ
あらすじ
成島秋子はバブル期で急成長中の商社に就職し、絵画取引部門で働き始めていた。
同じ日に入社した警備員の富士丸は元力士で、過去に彼は殺人を犯すも精神鑑定の結果、無罪となっていたという。
ここでも富士丸は周囲の人間を次々と殺害していく中、残業の為に会社に残った秋子は余儀なく対決する事になるのだった。
登場人物&出演者
・成島秋子(演:クノ真季子)
代表作に『蟲師』、『草の響き』などがあります。
主人公。美術館の学芸員から曙商事にスカウトされた。兵動から声をかけられるもしばらく会う事はなかった。
資料室に閉じ込められ、ドアを蹴破ろうとした富士丸にビビり、イヤリング落としてしまう。
地下室で富士丸の住処を見つけてしまい、彼がイヤリングをつけていると知って戦慄が走る。
富士丸の暴走で間宮の死を知って、吉岡や兵動たちと合流して彼の一室に逃げて待機する。
最後は負傷した吉岡を助け、富士丸に話しかける間に兵動が一撃を加え、生還を果たした。
・兵動哲朗(演:長谷川初範)
代表作に『幻の湖』、『北京原人/Who are you?』などがあります。
曙商事の人事部部長。会社の中では有能な社員として人事部以外の事業に関わって成功を果たしている。
普段はやる気のない状態で自室で寝ているが、秋子に相談して大きな商談を進めようとする。
富士丸が暴走して間宮の死体を見つけ、スプレーを顔に浴びせて秋子たちと合流を果たした。
自室で待機していると、吉岡がテレックスで助けを呼ぶとして彼を見直して手段を伝えた。
最後は富士丸に捕まりボコボコにされるが、一撃を加えて倒し、生還して家族と再会をした。
・吉岡実(演:諏訪太朗)
代表作に『奴隷船』、『N号棟』などがあります。
曙商事の12課に所属するベテランの男性社員。久留米からこき使われても文句を言わずに仕方なく従っていた。
給湯室でコーヒーを入れていると、背後から通った富士丸を見かけて体の大きさに驚いた。
富士丸が暴走して間宮の死体を秋子に見せられ、二人で逃げ回って兵動と合流し一室に退避。
助けを呼ぶ為にテレックスで外部に連絡して助けを求めるが、富士丸に見つかり重傷を負う。
最後は秋子たちに助けられるも富士丸に殴打されるが、なんとか生きていて生還を果たした。
・高田花枝(演:由良宣子)
代表作に『リング2』、『富江/replay』などがあります。
曙商事の12課に所属する女性社員。絵画についてよく知らないが、やる気だけはあって積極的に動いている。
新しく入ってきた秋子に意見を求めるなど、何かと便りにしながら女性同士として相談する。
久留米がいなくなってから兵動の指示で12課をまとめる事になり、水を得た魚のように働く。
秋子からイヤリングを警備員がしていると相談され、親身になるも結局は答えを出せず。
最後は罠と気付かずドアを開けて富士丸に捕まり、ロッカーに入れられ押し潰され死亡した。
・野々村敬(演:緒形幹太)
代表作に『蝉しぐれ』、『人間失格』などがあります。
曙商事の12課に所属する若い男性社員。新人として入ってきた秋子にフレンドリーな感じで話しかける。
新人の秋子を会社の中を案内する係をしていたが、嫉妬に駆られた久留米に止められていた。
秋子が残業する時に残ろうとしたが、久留米に帰宅を促されて反対できずに従ってしまう。
久留米が秋子の元を訪れなかった事を聞いて、自分が守るべきだと勝手に思い上がっていた。
最後は給湯室でコーヒーを淹れるが、富士丸に襲われ、抵抗するも勝てず悲惨な状況で死亡。
・久留米浩一(演:大杉漣)
晩年の出演作に『モルエラニの霧の中』、『梅子』などがあります。
曙商事に新しく創設された12課の課長を務める。気が小さく常にイライラしていて部下に当たり散らしている。
成果を出さないといけないプレッシャーでイライラするが、絵画の買付が分からず困惑する。
新しく入ってきた秋子に対して下心を持ち、絵画の取引額が高すぎるとして文句を連発した。
秋子を一室に連れ込んで下半身を出そうとして逃げられ、気まずくなるも諦めようとしない。
最後は残業の秋子に迫ろうとして戻るが、待ち構えた富士丸に捕まって殺害されてしまう。
・間宮(演:田辺博之)
代表作に『リング』、『難波金融伝/ミナミの帝王』などがあります。
曙商事が委託している警備会社のベテラン警備員。普段は社員に対して丁寧な態度で、同僚たちにも気を使う。
新人の富士丸を快く受け入れるが、もう一人の警備員には多額の借金をして言いなりになる。
富士丸が同僚の警備員を殺害すると、その掃除をやらされるも借金が消えて同調していた。
感じの悪い久留米を懲らしめようと富士丸に頼むが、痛めつける以上に殺されて慌てていた。
最後は逃げようとして捕まり、瀕死状態で秋子に見つけられるも富士丸にトドメを刺された。
・富士丸(演:松重豊)
近年の出演作に『ツユクサ』、『余命10年』などがあります。
元力士で曙商事に新人の警備員として配属される。過去に殺人を犯すも精神不安定として無罪放免となっている。
同じ日に秋子が転職して何かの運命を感じ取り、間宮を脅す同僚をあっさりと殺害していた。
会社の地下室に住み着いていて、資料室から逃げた秋子のイヤリングを手にして付けていた。
殺人がエスカレートして間宮が逃げるも殺害し、仕上げとして電気を止めて殺戮に走った。
最後は秋子を追い詰めるも兵動の一撃で頸動脈を負傷し、観念して地下室で首吊り自殺した。
感想
[個人的な評価]
本作は2021年にデジタルリマスター版が公開されています。
この作品は『CURE/キュア』や『回路』などで知られる黒沢清が監督と共同脚本を努めます。
独特の暗い雰囲気を上手く使う黒沢清監督の本領が発揮した、不気味なホラー映画という印象が強く残る作品でした。
大手商社に転職した主人公と同じ日に新人の警備員が入るという感じになるが、この対比はかなり面白いと言えます。
会社の中でも初めて設立された課で主人公が美術の学芸員として入ってきて、会社員として何も知らない状況から成長していく。
その一方で殺人事件を起こして世間を賑わせて不気味な新人警備員もまた、本性を徐々に出しながら暴走を始めていく。
2つのスタート地点から陰と陽のような感じで突き進み、それがラストの方で交わって恐怖のどん底に落とす展開となっています。
黒沢清監督の作品は複雑なメッセージ性のある作品を作る事が多いけど、本作はストレートな感じながら殺人を繰り返す新人の警備員はまた違う感覚を持っている。
誰にも理解されず、他の人間とは時間の流れ方が違う独特な感覚を持っているが、殺人に至る動機が曖昧すぎて不気味さを出しています。
今ではご飯を食べる人というイメージが付いている松重豊ですが、本作における不気味な新人警備員の役はハマっていたと思います。
決して多くを語らず、ターゲットを確実に無表情で殺害していく様子は、本作における大きな魅力になっていました。
主人公を演じるクノ真季子は状況に振り回されながらも、着実に会社員として成長するが、新人警備員との関係性が徐々に結ばれていく不安感も伝わってきます。
とにかく、本作は暗い雰囲気で流れていくが、いつも暗黒画面に文句を言っている人間として本作は演出として効果的だったと思います。
無意味にごまかす為だけに暗黒画面をしているのではなく、ちゃんと作品の雰囲気に合わせた演出ならば文句は言いません。
ただ、ラストが少しあっさりすぎたのは拍子抜けで、予定調和な部分が目立ったせいで少し残念に思ってしまいました。
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