作品データ
あらすじ
ホロコーストを逃れ、一人暮らしする叔母を頼って田舎へ疎開してきた少年。
しかし、その叔母が急死すると、身寄りをなくした少年はどこかにいる両親を探そうと一人旅に出かける。
行く先々で少年は共同体の異物として扱われ、壮絶な虐待を受け続けているのだった。
登場人物&出演者
・少年/ヨスカ(演:ペトル・コラール)
本作が長編映画デビュー作となります。
主人公。両親から離れて祖母と二人暮らしをしていた。東欧でもユダヤ人という事で差別を受けている。
両親に会いたいと願うも理由が分からず、祖母が亡くなって家も燃えて一人で旅に出ていく。
呪術師のオルガに買われると、手伝いをしていたが、村人に脅されて川に落ちて流される。
ミレルの家にたどり着いて雑用係をするが、妻と使用人の浮気問題で潮時として出ていった。
次に暮らした小鳥を売るレッフが好きだった売女が村人に殺され、首吊り自殺して出ていく。
ある村で雑用をするが、ユダヤ人という理由でドイツ軍に連行されるが、ハンスに逃される。
司祭の元で暮らし、後にガルボスに引き取られるもレイプされ、報復で穴に落として逃げた。
凍死寸前でラビーナに助けられるが、彼女の性欲処理の役もできず、山羊を殺して逃げた。
戦争孤児だと思われてソ連軍に拾われると、狙撃手のミートカから銃をもらって施設に行く。
最後は父親と再会するも心が壊れていたが、帰りのバスで名前を窓に書いて少し立ち直った。
・オルガ(演:アーラ・ソコロワ)
代表作に『Menya eto ne kasaetsya 』、『Sluchaynyy vals』などがあります。
呪術師の老女。ユダヤ人の少年が村人から迫害を受けていて、相談されるとそのまま引き取っていた。
少年を呪術をする時に雑用として荷物運びなどをさせるが、病気で倒れて治療していた。
最後は治療する為に目を離すと、他の村人によって少年が川に落とされて別れる事に。
・ミレル(演:ウド・キア)
近年の出演作に『シークレット・ランナー』、『バクラウ/地図から消された村』などがあります。
妻と使用人と暮らしている初老の男性。使用人が少年を連れて来ると、仕方なく雑用として家に置いた。
作業をしている時に妻と使用人が視線を合わせていると分かり、浮気しているとブチ切れる。
最後は食事中に交尾する猫で妻が欲情し、使用人の両目をくり抜いて、家を追い出した。
・レッフ(演:レフ・ディブリク)
代表作に『ルージャ/薔薇』、『マイティ・エンジェル』などがあります。
小鳥を捕まえて売って生計を立てている。ミレルの家から逃げてきた少年を受け入れて手伝いをさせる。
森にいる小鳥を捕まえる為に少年を木に登らせ、罠を仕掛けさせて捕まえようとしていた。
最後は好きだった売女が村人のリンチで殺されると、希望を亡くして首吊り自殺を果たした。
・ルドミラ(演:イトゥカ・ツヴァンツァロヴァー)
代表作に『Restart』、『Román pro pokrocilé』などがあります。
森に住んでいる女性。村から離れて暮らしているが、男たちを誘惑して肉体関係を結ぶ。
小鳥を集めるレッフの呼笛に応えると、裸で捕まえた小鳥を差し出して楽しんでいた。
最後は村の少年たちに手を出した事で女性たちに集団リンチされ、レッフの家で死んだ。
・ハンス(演:ステラン・スカルスガルド)
近年の出演作に『DUNE/デューン 砂の惑星』、『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』などがあります。
ナチス・ドイツの兵士。村に立ち寄ったソ連軍に少年がユダヤ人だと言われた村人が駐屯地に来て様子を見ていた。
上官が村人に連れて来られた少年を見ていて、処刑の為に志願者を募ると名乗り上げた。
最後は少年を殺すつもりは一切なく、処刑したように見せかけて、彼をそのまま逃した。
・司祭(演:ハーヴェイ・カイテル)
近年の出演作に『アイリッシュマン』、『ラスト・マン/地球最後の男』などがあります。
ユダヤ人としてドイツ軍に捕まった少年を見つけて、命を助けるように懇願して外で待っていた。
少年が解放されて教会へ連れて行くが、体が病魔に侵されていたせいでガルボスに任せた。
最後は少年からガルボスの虐待を聞かされるが、結局は病魔に勝てず亡くなってしまう。
・ガルボス(演:ジュリアン・サンズ)
代表作に『メダリオン』、『オーシャンズ13』などがあります。
教会へ通っていた酒を作っている男。教会に来た時に少年をひと目見て気に入って司祭に面倒をみると申し出た。
司祭を見送ると、本性を現して少年をレイプし、暴力によって自分の言いなりにしていた。
最後はナイフを手に入れた少年に発見場所まで行くが、穴に落とされネズミに食い殺された。
・ミートカ(演:バリー・ペッパー)
近年の出演作に『AWAKE/アウェイク』、『クロール/凶暴領域』などがあります。
ソ連軍の寡黙な狙撃手。上官から少年が戦争孤児だとして、面倒をみるように言い渡される。
まったくしゃべらない少年の気持ちを察して、言葉を交わさなくても面倒を見ていた。
最後は仲間を殺した村人に報復して少年に教えて、戦争が終わると自分の拳銃を渡した。
・ニコデム(演:ペトゥル・ヴァネク)
代表作に『トブルク』、『ウィルソン・シティ』などがあります。
少年の父親。ナチス・ドイツの侵攻で危機感を持ち、息子を遠くに住んでいる祖母に預けていた。
ナチス・ドイツに捕まってホロコーストに収容されるが、終戦によって息子と再会を果たす。
あの頃の息子とは別人のような感情のない状態で再会して、その現実に対して悲しんでいた。
最後は妻の元に帰るバスで居眠りすると、少年が窓に自分の名前を書いた事を知らずにいた。
感想
[個人的な評価]
本作はポーランドの作家イェジー・コシンスキの小説『ペイテティッド・バード』を基に作られています。
この作品は『第76回ヴェネツィア国際映画祭』のユニセフ賞を受賞し、『第92回アカデミー賞』の国際長編映画賞チェコ代表作品となっています。
チェコ映画は今回が初めてとなりますが、全編を白黒でBGMが一切なく、セリフも最低限というシンプルな内容です。
ただ、物語は少年を通して描かれているが、時代は第二次世界大戦で彼自身もユダヤ人だから遠く祖母の家に預けられる。
その理由はホロコーストを逃れる為であったが、当然のように本人は理解しておらず、なぜ遠くに追いやられたのか疑問に思っていた。
当初は助けたイタチが他の子供たちに焼き殺され、その遺体を拾って悲しみながら埋葬するほど純粋な子供でした。
祖母が亡くなって家も燃えてしまった事により、住む場所を失った少年が目指すのはどこかにいる両親という流れになる。
そこから少年はユダヤ人であるが故に迫害を受けながらも、両親を探すけど、あまりにも悪意のある大人たちに振り回されます。
最初は純粋だった主人公が徐々に瞳から光を失い、ついに殴られただけで相手を殺すまで心が壊れてしまうのです。
物語自体はエンターテイメントとは真逆の淡々としたモノであり、その悲惨さは白黒の映像もあって、そこまで感じられない。
しかし、それは逆に物語が持つ少年の心が汚れていく世の中の悲惨さを伝えるには少し物足りない印象もありました。
主人公の少年が何人も渡り歩いていくせいで、一つひとつのエピソードが単なるエピソードだけでドラマ性は少し薄かったです。
セリフが少ない為に鑑賞している側で補完していかないといけないし、少し間延びしてしまう部分もあって中だるみする。
あくまでインパクトのある作品という立ち位置であって、これをエンターテイメントとして扱うのはちょっと違う気がします。
マイルドに仕上がったのはいいけど、尖らせるべき部分も和らいでしまったので、期待していたほど記憶には残らないと感じました。
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