作品データ
公開年月 | 2018/06/14 |
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ジャンル | サスペンス |
原作 | なし |
監督 | グスタフ・モーラー |
脚本 | グスタフ・モーラー、エミール・ニゴー・アルバートセン |
製作 | リーナ・フリント |
製作国 | デンマーク |
鑑賞方法 | レンタルDVD |
あらすじ
捜査中のトラブルにより現場を外された警察官のアスガーは、緊急通報指令室のオペレーターに異動させられて勤務している。
元の職場への復帰を目前にしていた矢先、ある夜、今まさに誘拐されようとした女性イーベンからの通報が入ってきた。
走行中の車の中から携帯電話で通報するイーベンは、聞こえてくる声と音だけを手がかりにアスガーは犯人特定に全力を尽くすのだった。
登場人物&出演者

代表作に『光のほうへ』、『ザ・スクワッド』などがあります。
主人公。警察官。緊急通報指令室のオペレーターとして勤務している。現場復帰は近い。
退屈なオペレーターとして通報者たちの解決をするが、イーベンの通報で空気が変わる。
実は自暴自棄になって軽犯罪を犯した若者を正当防衛に偽装して一方的に殺害したという。
当初はイーベンを被害者、ミケルを加害者と決めつけるが、真実を知ってショックを受ける。
最後は無事にイーベンが保護されると知り、誰かに電話をかけながら仕事場を後にした。

代表作に『Mesteren』、『Ninna』などがあります。
何者かに連れ去れた女性。車のトランクの中から緊急通報指令室に通報して助けを求める。
受け取ったアスガーの落ち着いた誘導で手がかりを探すも、どうする事もできず一度切る。
再び電話をかけると、アスガーの言葉で夫への反撃を試みる中で精神を病んでいると発覚。
実は精神病院を抜け出して赤ん坊の息子を殺してしまい、自分では助けたつもりでいた。
最後は陸橋に登って自殺を図るが、アスガーの寄越した警察たちに無事保護された。

代表作に『Fuglene over sundet』、『Sa laenge jeg lever』などがあります。
イーベンとミケルの娘。別居していた父親が突然家にやって来て、母親を連れ出したと通報。
怯えていた様子で通報したが、アスガーの言葉で落ち着きを取り戻して警察官を待っていた。
再び通報した時にちょうど警察官がやって来ると、電話を渡して家の状況を伝えさせた。
最後は警察官たちに保護されると、オスカーの状態を代わりに伝えてもらい真実が明るみに。

本作が長編映画デビュー作となります。
イーベンの元夫。過去に暴力沙汰を起こし服役している。イーベンたちと離れて暮らす。
イーベンの通報で誘拐した犯人だと言われ、過去を調べたアスガーから加害者と認定される。
実は過去の犯罪によって親権を失い、子供たちと会えない裁判命令が出されていた。
精神病院を抜け出したイーベンがオスカーを殺し、自分の手で始末する覚悟で誘拐していた。
最後はアスガーのせいでイーベンが逃げ出し、彼からの謝罪を拒否して電話を切った。

代表作に『Bagland』、『Aminas breve』などがあります。
アスガーの相棒。アスガーが緊急通報指令室に左遷される以前から一緒に現場を回っていた。
翌日にアスガーの無実を正当化する証言を控えるが、プレッシャーのせいで酒を飲んでいた。
イーベンを助ける為べく独自に動いていたアスガーの為にミケルの家を調べに出向いた。
ミケルが子供たちの親権を失っていた裁判命令を見つけ、アスガーに報告をしていた。
最後は真実が明らかになってショックを受けるアスガーに証言をすると約束して家に帰った。

代表作に『Se til venstre, der er en svensker』、『Les traducteurs』などがあります。
アスガーの上司。若者を正当防衛で殺害したアスガーの現場復帰を強く望んでいる。
大きな事件を解決した後で電話番をしていると、アスガーからの連絡を受けて話していた。
翌日に控えている裁判でラシードの証言でアスガーが現場復帰できると確信している。
最後はアスガーが職務の枠を越えたやり方を注意し、交代時間で帰るように言い聞かせた。
感想
[個人的な評価]
本作は『第91回アカデミー外国語映画賞』にデンマーク代表として出品されています。
他に『サンダンス映画際』のワールド・シネマ・ドラマティック・コンペティション部門にて上映されています。
いわゆるワンシチュエーションスリラーの作品で、物語の舞台は緊急通報指令室の中で始まって終わりを迎える事になります。
究極のワンシチュエーションスリラーと言えば、箱に閉じ込められた男の物語『[リミット]』であるが、本作はそれに近い形になっています。
主人公であるアスガーは自暴自棄になって、犯罪を犯した若者を正当防衛に偽装して一方的に殺害して緊急通報指令室に左遷されている。
翌日に裁判が控えていて、相棒だった男がウソの証言をする事で現場復帰を果たせるが、そんな彼の運命を変える通報で物語が始まっていきます。
主人公は通報者を助けようとする一見して正義の味方に見えるが、イライラしてモノに当たり散らし、クライマックスで左遷された理由も明かされていきます。
本作の主人公は自分の罪に対する償いを求めていて、ちょうどそこにイーベンや彼女の娘からの通報で気持ちがリンクした感じになります。
基本的にオペレーターは事務的に対応するべきであるが、不安定な気持ちの主人公が感情を入れてしまうのです。
電話口からしか状況が分からず、そのせいで主人公は思い込みをしてしまい、トンでもない事実が判明して顔色が変わる様子が分かりやすかったです。
直接的な映像化をすると色々と問題があるエピソードだが、これを電話口だけで済ました上で恐ろしい状況を上手く表現していると思います。
テンポも非常にいいから自然と物語の中へ入れるし、何より余計なドラマや映画だと思わせないBGMを使わない演出は良かったです。
徐々に明らかとなる真実に驚きを持たせるし、主人公によるミスリードは簡単に予想できてしまうが、それでも飽きさせない工夫がしっかりとありました。
元の生活に戻れる前夜で起きた一本の通報により、主人公の考え方を変えるだけの事件としても説得力があったと思います。
この作品こそ「ザ・サスペンス」とも言える教科書のような構成で、何より主人公を演じたヤコブ・セーダーグレンの引きつける演技力が良かったです。
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