作品データ
公開年月 | 2001/11/03 |
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ジャンル | ファンタジー/ドラマ |
原作 | カレル・ヤロミール・エルベン 『オテサーネク』 |
監督 | ヤン・シュヴァンクマイエル |
脚本 | ヤン・シュヴァンクマイエル |
製作 | キース・グリフィス、ヤロミール・カリスタ、ほか |
製作国 | チェコ、イギリス |
鑑賞方法 | レンタルDVD |
あらすじ
子供のない妻を慰めようと夫のホラークは木の切株を赤ちゃんの形に削ってプレゼントし、彼女は本物の子供のように接していた。
隣に住む少女のアルジュビェトカだけは、子供のいない夫婦が切株を育てて最後にはそれに食べられるチェコに古くから伝わる民話“オテサーネク”との同じように感じていた。
やがて、ホラーク夫人の切株も民話と同じように生を受け、周りのモノをどんどん食べ尽くしていくのだった。
登場人物&出演者

代表作に『Kopretiny pro zámeckou paní』、『スイート・スイート・ビレッジ』などがあります。
ボジェンカの夫。無精子症で不妊症治療していた。子供ができず妻の悲しむ顔を見て心を痛めていた。
別荘を購入して切株で人形の赤ん坊を作り、妻にプレゼントし本物として接する姿に驚く。
妊娠を周囲に伝えた妻の暴走に付き合う事になり、オティークが生まれて家に連れてきた。
オティークの食欲が止まらず人を食べてしまい、仕方なく縛って地下室に閉じ込めてしまう。
最後はチェーンソーを持ってオティークを止めようとしたが、出来ずに食われてしまった。

代表作に『Forgotten Light』、『Babovresky』シリーズなどがあります。
カレルの妻。突発性不妊症のせいで子供がなかなかできない。産婦人科から帰る度に絶望した状況になっていた。
別荘を購入した夫が人形に加工した切株を持ってくると、本物の赤ん坊として接していた。
家に連れていく為に妊娠を偽装していき、ついに生まれると息子オティークとして育てる。
食欲が止まらないオティークに手を焼いて、人を食べた事から暴走を止められずにいた。
最後は処分しようとした夫が地下室に行くと、すぐに付いていくもオティークに食べられた。

代表作に『Kidnapping Home』、『The House』などがあります。
アパートに住んでいる少女。隣人たちをよく観察し、それぞれが抱える問題について理由を自分なりに考える。
カレルとボジェンカの夫婦が不妊症だと知り、その本を読んで両親に細かく報告していた。
赤ん坊が生まれたボジェンカを怪しむと、オティークを見ておとぎ話の本から正体を知った。
地下室にオティークが閉じ込められ、ボジェンカたちの代わりに食料を渡して面倒を見た。
最後はオティークをキャベツ畑を荒らし、事情を知った管理人を止めようとするも失敗した。

代表作に『Slunce, seno, jahody』、『レジェンダリー』などがあります。
アルジュビェトカの母親。専業主婦でスープ料理が得意。隣人のボジェンカたちとも非常に仲が良い。
ボジェンカが妊娠した事を喜んでいると、カレルと酒盛りする夫の飲酒をなんと止めていた。
娘が大量の食べ物を持ち出そうとしたところを見つけ、止めたせいで人が食われる事になる。
住人が次々と行方不明になると、今度は自分たちの番だと強迫観念になりバリケードを作る。
最後はオティークがキャベル畑を荒らし、娘が管理人を必死に停めている姿を見ていただけ。

代表作に『悦楽共犯者』、『ルナシー』などがあります。
アルジュビェトカの父親。いつもテレビを見ている。毎回のように行儀の悪い言動をする娘に厳しく注意する。
ボジェンカたちが帰ってきて、娘から不妊症だと言われて読んでいる本を取り上げていた。
カレルの妻が妊娠したと知ると、彼を家に迎え入れて酒を飲ませて一緒に酔って喜んでいた。
住人が次々と消えている事を深く気に留めないが、妻の暴走ぶりに辟易しながら従った。
最後はオティークがキャベツを食い散らかし、怪物の正体を知るも止める娘を見ていただけ。

代表作に『剃髪式』、『Kameňák』シリーズなどがあります。
アパートの最上階に住んでいる老人。暖を取る為に毎回地下室から石炭を取りに行くが、階段を登るのが辛い。
アルジュビェトカを見かけると、すぐに眼鏡をかけて彼女の足をじっと見て触ろうとする。
当然のようにアルジュビェトカが両親に訴えるが、老人という理由で信じてもらっていない。
ボジェンカたちの家を覗くアルジュビェトカの後ろ姿を見て、興奮して発作を起こしていた。
最後はアルジュビェトカに地下室へ誘われると、待っていたオティークに食われてしまう。

本作が長編映画デビュー作となります。
アパートの女性管理人。庭でキャベツを作っていて愛用のクワを置いている。住人たちにいつも声をかける。
生まれた赤ん坊の顔を見た事がなく疑っていると、乳母車に人形が入っていて更に疑う。
郵便局員がいなくなった事で警察に相談するも信じてもらえず、ボジェンカを疑っていた。
アルジュビェトカにクワを隠されたと知り、その理由はおとぎ話として本をもらい読む。
最後はキャベツをオティークが食い散らかすと、おとぎ話の通りクワを持って地下室へ行く。
感想
[個人的な評価]
本作はカレル・ヤロミール・エルベンの同名民話を実写映画化した作品となります。
この作品は『アリス』や『ファウスト』で知られるヤン・シュヴァンクマイエルが監督と脚本を務めています。
原作となっている民話「オテサーネク」の意味は「食人木」となっていて、まさにその通りに物語が進んでいきます。
ずっと不思議な雰囲気で展開していく内容で、不妊症に悩む妻の為に夫が切株を赤ん坊に似せてプレゼントしたところから始まります。
やがて、赤ん坊が生まれてオティークという名前をつけるが、当然のように人間じゃないので人には見せられない。
ただ、信じた夫婦によって単なる切株が人間のように食べ出し、止まらない食欲が人を食べるまでになるという感じでした。
不妊症に悩む夫婦にとって藁にもすがる思いというのがあるだろうけど、本作はそれを極端にしたような印象でした。
どう見ても人形にした切株であっても、妻が本物の赤ん坊として接していき、それが本当に命を宿して止まらない食欲を暴走させる点に強烈なインパクトがあります。
ファンタジーという枠としても、人を食べる切株などホラー映画と言えるけど、全体的に不思議すぎる雰囲気で少し違うような感じでした。
途中から夫婦に変わって隣に住む少女が面倒をみていくが、ちゃんとおとぎ話と連動する展開が非常に分かりやすかったです。
こういうタイプの作品というのは物語が進んでいくと、ワケの分からない状況になっていくけど、ちゃんとおとぎ話が説明に入るから迷っていなかったです。
ある意味、本作は不妊症に悩んでいる夫婦たちの思いをメッセージにした作品であり、単なるホラーファンタジーとは片付けられないでしょう。
それと何度も登場する食事シーンは少し下品に見えてしまうが、これも敢えての演出としてやっているのだと思います。
多分、それは食人木であるオティークと実際の人間たちとは差がなく、あれも生きた人間と変わらないような事を言っているのだと思いました。
本作は面白いか面白くないかという観点ではなく、ずっと不思議さに夫婦の悲劇を乗せているようななんとも言えない内容でした。
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