作品データ
あらすじ
とある自主製作映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画を撮影していた。
本物を求める監督はなかなかOKを出さず、ついにテイクが42に達した時、本物のゾンビがどこからともなく現れる。
撮影隊が次々とゾンビの餌食となる中、監督は大喜びでその様子を撮影し続けるのだった。
登場人物&出演者
・日暮隆之(演:濱津隆之)
代表作に『憧れ』、『魔法少年☆ワイルドバージン』などがあります。
主人公。映画監督。バラエティ番組の再現ドラマやカラオケの背景映像を手がけている。
ゾンビ映画専門チャンネル「ゾンビ・チャンネル」の開局記念企画として依頼を受ける。
いつもは自分の意見を引っ込めて、依頼者であるプロデューサーや出演者の言いなり。
今回の記念企画を絶対に成功させようと、現場でのトラブルを処理しながらドラマを放映。
最後は妻の熱演、娘の現場を仕切る助力によって、見事にノーカットドラマを成功させた。
・日暮真央(演:真魚)
代表作に『ちょっと今から仕事やめてくる』、『検察側の罪人』などがあります。
日暮監督の娘で大学生。父親と同じく映像の世界に飛び込むも気合いが空回りしている。
妥協ばっかりでこだわりを持たない父親の作品に興味がなく、チャンネルを変えるレベル。
現場では本物の演技に強いこだわりを持ちすぎて、混乱させて何度もクビにされている。
憧れの役者が出演する父親の現場に同行し、トラブルに陥ると率先して裏で仕切る。
最後は父親のこだわりをくみ取って、ドラマの絶対必要なオチを実現させて成功に導いた。
・日暮晴美(演:しゅはまはるみ)
代表作に『ラブ&ポップ』、『わが母の記』などがあります。
日暮監督の妻。元女優。役に入り込みすぎる性格のせいで業界から追放されてしまう。
現在では専業主婦をして退屈な毎日を送り、趣味に没頭しようとするも長続きしない。
娘が監督業を目指して一人暮らしを始める事に心配するも、それ以上に夫を心配していた。
夫の現場に同行していて役者が足りなくなり、脚本を覚えていた事もあって急遽出演。
最後は熱が入りすぎて暴走するも夫に止められ、最終的にオチを応援していた。
・松本逢花(演:秋山ゆずき)
代表作に『恋する小説家』、『ナポリタン』などがあります。
ノーカットドラマ主演の女優役のアイドル。脚本に書いている無茶な事を拒否している。
本人はやりたいシーンであるが、アイドルのイメージを保つべく事務所からNGが出ている。
日暮監督はこだわりが少ないと分かり、都合の悪い事を遠慮なく変更させていく。
現場でトラブルが起きてしまうと、急遽脚本の内容が変更しても柔軟に対応する実力を発揮。
最後はメチャクチャになりそうでならない展開を上手く収束させて、ドラマを成功させた。
・神谷和明(演:長屋和彰)
代表作に『大奥/男女逆転』、『バクマン。』などがあります。
ノーカットドラマの俳優役。売れっ子俳優でイケメン。脚本の穴についてツッコミを入れる。
キャスティングされた時から不満を漏らしていて、何かと日暮監督に意見を口にしていた。
共演者から話しかけられてもマトモに会話をする意思もなく、完全に見下している態度。
現場でトラブルが起きて日暮監督が監督役として出演し、そのアドリブに圧倒された。
最後は無我夢中で演じているうちに態度が一変し、ドラマを成功させる為に協力的になった。
・細田学(演:細井学)
代表作に『花とアリス殺人事件』、『野生のなまはげ』などがあります。
ノーカットドラマのカメラマン役。中年男性。日暮監督作品の常連。アルコール中毒者。
アル中のせいで酒がないと禁断症状を起こしてしまい、そのせいで娘に絶縁されている。
いつも仕事している日暮監督に悩みを笑い飛ばすが、思い出して急に泣き出してしまう。
現場で差し入れの酒を飲んで演技どころじゃなくなり、日暮監督が支えてゾンビ役をやる。
最後はシラフに戻りドラマのオチを成功させるべく、人間ピラミッドの下で支えていた。
・山ノ内洋(演:市原洋)
本作が長編映画デビュー作となります。
ノーカットドラマの助監督役。気が弱く神谷に脚本の話しをするも無視されて引っ込む。
ゾンビが斧を持って主人公を襲う点に神谷が不満を持ち、唯一の見せ場が消えてしまう。
ベテランとして緊張を解そうとした細田と仲良くやるが、彼のゲロを浴びて取り乱す。
戸惑ったままゾンビ役となって主人公たちを襲い、自分の役目をキッチリ果たした。
最後はドラマを成功させるべく、オチの為に人間ピラミッドの下で支えていた。
・山越俊助(演:山﨑俊太郎)
本作が長編映画デビュー作となります。
ノーカットドラマの録音マン役。何かとアレルギーを持っていて事前にメールで伝えている。
スタッフの手違いで自分のメールが読まれていない事にしつこく文句を口にしていた。
現場で間違えて苦手な硬水を飲んでしまい、ドラマの放映中にお腹を下してしまう。
それでも放映は続けていて、下痢している間にもゾンビメイクされて恥ずかしくて俯く。
最後は下痢が治まると、ドラマを成功させるべく人間ピラミッドの下で支えていた。
・吉沢真一郎(演:大沢真一郎)
代表作に『東京ロンググッバイ!!』、『さよならの夜明け』などがあります。
「ゾンビ・チャンネル」のラインプロデューサー。日暮監督を笹原に紹介をしてくれた。
名刺代わりの「安い」、「早い」、「質はそこそこ」の日暮監督を高く評価している。
あくまで番組を成功させる事だけに執着して、日暮監督の作品に対する熱意を理解できず。
出演者が急遽来られなくなると、代役として日暮監督と妻の出演をすぐに許可した。
最後は日暮監督と娘の熱意に触発されて、ドラマを成功させるべく人間ピラミッドに入った。
・笹原芳子(演:竹原芳子)
代表作に『クレイジーアイランド/奈緒美の愛と青春と狂気の爆走ロード』などがあります。
「ゾンビ・チャンネル」のテレビプロデューサー。関西人。吉沢から日暮監督を紹介された。
前代未聞となる開局記念企画として37分のノーカットドラマを日暮監督に依頼をした。
あまりにも無茶な企画に日暮監督は断ろうとするが、有無を言わせない態度で承諾させる。
スタジオからノーカットドラマをスポンサーたちと鑑賞するが、現場の状況は知らず。
最後は見事にドラマがノーカットで終了し、成功を確信してスポンサーたちと食事に行った。
感想
[個人的な評価]
本作は『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018』を含めた多くの映画賞にて受賞とノミネートされています。
監督&俳優養成スクールのENBUゼミナールにて「シネマプロジェクト」の第7弾作品として製作されています。
当初はENBUゼミナールが単独で配給していたが、口コミによる拡散でアスミック・エースとの共同配給となりました。
本作は自主製作映画でありながら、日本のみならず、全世界で大ヒットをした作品である。
一般の観客だけに限らず、プロの批評家からも多くの絶賛するコメントが寄せられています。
つまり、この作品を観ないといけない使命感があったけど、果たして自分は彼らと同じような評価ができるか心配していました。
序盤では37分の生放送でドラマをワンシーンをノーカットでやってしまう大胆な構成です。
しかしながら、『バードマン/あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』では、2時間に渡るノーカットを実現しているのは遠く及びません。
ですが、本作はノーカットを売りにしたドラマではなく、その後に待っている裏側が本編だと言えるだろう。
ハッキリ言って、冒頭のノーカットドラマは安っぽいゾンビ映画で面白くないです。
これが終わるまでずっと半信半疑で、なぜ本作が絶賛されているのか分からず、ちょっとばかり不安が過ぎりました。
それで場面が変わってドラマが放映される1ヶ月前に時間は戻されるが、そこから徐々に本作の本質が分かってきました。
そして、本作が大爆発するのはドラマが放映される直前から、監督がどれだけの熱意で臨んでいるのかすぐに理解できるだろう。
邦画業界は事務所の力関係、スポンサーの資金力で左右されて、監督は作りたいモノが作れない現実を抱えています。
本作には強いメッセージが込められていると同時に、上田慎一郎監督の二重構造にした上手さが光っています。
なんとか作品を完成させようとする監督だけじゃなく、現場にいるスタッフや出演者の見えない努力が素晴らしかったです。
トラブルが起きても対象して、それすら作品の一部にするプロ根性を見て、まだまだ日本には才能ある作り手がいると実感させられました。
ただし、本作は歯車が上手く噛み合った事で素晴らしい出来になったが、下手に大手が手を付けるとクソみたいなモノが出来上がるであろう。
それぐらい、本作から伝わってくる作品への強いこだわりがあって、手を抜いてそこそこのモノを求める方々には分からない熱意がありました。
今後、このような作品は素晴らしい一方で、似たようなモノは作って欲しくないと思わせる一点突破の作品でした。
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