作品データ
あらすじ
かつて海辺の孤児院で育ったラウラは夫のカルロスと7歳の息子シモンとともに、閉鎖されたと聞いて買い取って引っ越してきた。
ラウラは孤児院を障害のある子供たちの為の施設にするべく、再建しながら開園準備を進めていた。
そんな中、シモンが空想上の友達と遊ぶ姿にラウラは不安を感じ始め、数日後、施設の開園パーティが行われた日に息子は消えてしまうのだった。
登場人物&出演者
・ラウラ(演:ベレン・ルエダ)
代表作に『海を飛ぶ夢』、『ロスト・アイズ』などがあります。
主人公。過去に“よき羊飼い”という孤児院で育った。里親が見つかって新たな家族で成長した。
カルロスと結婚してシモンを養子に迎え、育った孤児院を買い取って改装を進めていた。
シモンに真実を伝える前に空想の友達にバラされ、そのまま姿を消して9ヶ月も探していた。
霊媒師のアウローラが家を霊視し、孤児院でベニグマが子供たちを殺した事を説明された。
最後は隠し部屋で死んだシモンの遺体を見つけ、自殺して他の子供たちに物語を聞かせた。
・カルロス(演:フェルナンド・カヨ)
代表作に『スペイン一家監禁事件』、『ペーパーバード/幸せは翼にのって』などがあります。
ラウラの夫。医者。ラウラとの間に子供を授けられなかったが、代わりに未熟児だったシモンを引き取る。
シモンは長く生きられないと分かりながらも、薬を処方していつか真実を話そうとしていた。
何者かにシモンが誘拐され、ラウラも足が不自由になるも、懸命に探し出そうとしていた。
アウローラたちの霊視を目の当たりにするが、インチキだと片付けてまったく信じない。
最後はラウラがシモンを見つけるも死んでしまい、ペンダントを見つけて希望を見出した。
・シモン(演:ロジェール・プリンセプ)
代表作に『ペーパーバード/幸せは翼にのって』、『盲目のひまわり』などがあります。
ラウラとカルロスの一人息子。空想の友達といつも遊んでいる。薬を定期的に服用しないと死んでしまう。
孤児院にやって来ると、海岸の洞窟でトマスという新しい友達と仲良くなって家に呼んだ。
トマスと遊んでいるうちに真実を知って、ラウラに対して厳しい言葉を浴びせてしまう。
孤児院の宣伝でパーティーが開かれるも参加せず、ラウラに反対してそのまま姿を消した。
最後は隠し部屋に閉じ込められ死亡したが、母親が死んだ事で他の子供たちと物語を聞いた。
・アウローラ(演:ジェラルディン・チャップリン)
代表作に『ドクトル・ジバゴ』、『ジュラシック・ワールド/炎の王国』などがあります。
霊媒師。心霊現象を研究する大学教授から紹介を受けて、ラウラたちが住む孤児院にやって来た。
様々な機械と大学教授が同席し、トランス状態に入ってすぐに子供たちの声を聞き出した。
孤児院で起きた子供たちに対するベニグマの殺人を暴き、彼らの苦しむ姿を見ていた。
霊視が限界を突破して強引に終わらせると、ラウラに孤児院で起きた事実を説明していた。
最後はカルロスにインチキだと言われ、退散する際にラウラの母親としての強さを認めた。
・ピラール(演:マベル・リベラ)
代表作に『海を飛ぶ夢』、『宮廷画家ゴヤは見た』などがあります。
心理学者。シモンが行方不明になって、捜索している間に最後の目撃者だったラウラに尋問していた。
ラウラが見かけたトマスについて調べたが、当日誰も見ていないという証言を受けた。
ベニグマが事故死して身辺調査をしていたら、かつて孤児院で働いていたと突き止める。
アウローラが孤児院の霊視をすると分かって同行し、超常現象を目の当たりにした。
最後は霊媒師が詐欺だとラウラに説明するが、シモンを見つけられないと突っ込まれて退場。
・ベニグナ・エスコベード(演:モンセラート・カルーヤ)
代表作に『セックス・チェンジ』、『El temps i els Conway』などがあります。
ソーシャルワーカーを自称し、まだ改装中だったラウラたちの孤児院をアポなし訪問した。
シモンが抱えている病気について知っていて相談を求めるが、拒否されて追い出された。
夜のうちに何かを掘り出しているところをラウラに見つかると、シモン誘拐の容疑者となる。
実は息子を孤児院の子供たちに殺され、彼らを毒殺して焼却炉で遺体を焼いていたという。
最後は道端でラウラに呼び止められ、車に激突してアゴが取れるような状態で死亡した。
感想
[個人的な評価]
本作は「カンヌ国際映画祭」や「トロント国際映画祭」で上映された作品となります。
「アカデミー賞外国映画賞」のスペイン代表で、ゴヤ賞では脚本賞を含めた7部門で受賞し、14部門にノミネートされています。
ホラー映画好きのベスト100にランクインしていた作品で、物語としてスローテンポのような印象でした。
中盤までは孤児院で育って成長した主人公が戻って、新たな孤児院を開こうとしている様子が描かれている。
更に養子となっていた息子との絆を描くが、その息子が空想の友達から自分の素性を聞いてようやく物語が動き始めます。
中盤以降は霊媒師が登場して、孤児院に隠された秘密が暴かれていくが、前半と後半では別の作品とも言えるぐらい雰囲気が違っています。
物語として直接的な幽霊というよりは、それを感じさせるような雰囲気が強くて、そこに母親の後悔と必死さが出てくる。
息子が行方不明になってからどんな事をしても探そうとするところで、当初は後悔から母親としての自覚と強い愛情が芽生えてくる。
孤児院で実際に何があったのかハッキリと描写しなかったが、その理由は物語として中核じゃないから敢えて避けていたと思われます。
その一方で幽霊をまったく信じない典型的な夫が主張してくるが、これに関してかなりの違和感を持ちました。
それまで協力的だった夫が幽霊の話しになって、急に感情的な状況になってくるのは少し引っかかりました。
夫の態度について演出としてやっているかもしれないが、それまでの過程がなくて、いきなりそうなるから違和感を持ってしまう。
頑なに幽霊を信じなかった夫だが、妻を亡くしてから絶望していたのか、彼女が現れてからの笑顔で吹っ切れたような感じにしたかったのだろうと思われる。
この展開は分かりやすくて、何かを失ってからこそ、見えない希望にすがっていく行動理念は伝わってきます。
ただ、夫が幽霊を信じない設定をもっと始めの方で少しでも触れてくれれば、その違和感は少しで緩和できたと思います。
前半は本当にスローテンポで少し退屈であるが、中盤を過ぎて幽霊の存在が示唆されるところまから面白くなる。
そして、ラストでの結末はバッドエンドだと言えるけど、本人たちにとってハッピーエンドだったかもしれないだろう。
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