作品データ
あらすじ
1970年代のハンブルグ、安アパートの屋根裏に暮らす孤独な中年男フリッツ・ホンカ。
フリッツ・ホンカは夜な夜なバーに繰り出して酒をあおり、目を付けた女に声をかけるもブサイクなせいで相手にもされない。
それでもある日、酒に釣られて一人の中年女性がフリッツの誘いに応じるのだった。
登場人物&出演者
・フリッツ・ホンカ(演:ヨナス・ダスラー)
代表作に『Lomo – The Language of Many Others』、『僕たちの希望という名の列車に乗った』などがあります。
主人公。安アパートの屋根裏に暮らす中年の男性。いつも酒を飲んでいて醜い顔をしている。
行きつけのパブで見た目の悪いを娼婦に酒を奢り、家に連れ帰るが感情的になって殺害する。
死体をバラバラにして小さな部屋に隠し、その後も同じようなパターンを繰り返していく。
ある日、事故に遭ってから断酒して、清潔な仕事に就くも女性とのトラブルで再び堕落する。
最後は行きつけのパブから帰ると、家が燃えていて、遺体がバレてそのまま逮捕された。
・ゲルダ・フォス(演:マルガレーテ・ティーゼル)
代表作に『パラダイス/愛』、『夏をゆく人々』などがあります。
フリッツが行きつけのパブにいた初老の女性。金がなくて飲み物を変えずに座っていただけ。
気になったフリッツから酒を奢られると、そのまま彼の家に言って命令されるままにする。
行くところもなく、汚いフリッツの部屋を片付け、料理まで作るようになって一時同居する。
娘がいてフリッツに紹介する約束をするが、実は絶縁状態でバレると暴力を振るわれた。
最後はパブに来た救世軍の女性に声をかけられ、衣食住を約束されてそのままついて行った。
・ヘルガ・デニングセン(演:カーチャ・シュトゥット)
代表作に『マリアの受難』、『マーサの幸せレシピ』などがあります。
デパートで掃除係をしている中年の女性。夜勤の警備するフリッツに最初は驚いていた。
丁寧に謝罪していたフリッツに対して悪い印象を持たず、そのせいで勘違いされてしまう。
実は夫がいて、誕生日だからと言って職場まで来て祝ってくれるが仕事をクビになっている。
悩んでいたところをフリッツに相談して、断酒した彼の覚悟を簡単に破らせてしまう。
最後はフリッツにレイプされかけるがなんとか逃げ出し、夫が後から来るも制裁できず。
・シギー・ホンカ(演:マルク・ホーゼマン)
代表作に『ソウル・キッチン』、『タイムリミット/見知らぬ影』などがあります。
フリッツの兄。フリッツと同じ大酒飲み。近くを寄ったという理由でフリッツの家に来た。
ちょうどゲルダが家に滞在していて、掃除と料理をやってくれる女性として認めていた。
フリッツの狙いがゲルダの娘だと分かると、おすそ分けを頼むも冗談混じりで拒まれていた。
最後は泥酔状態であったが、家に帰ろうとして、ゲルダを手放すなと言って帰っていった。
・ウィリー(演:トリスタン・ゲーベル)
代表作に『西という希望の地』、『50年後のボクたちは』などがあります。
男子高校生。ペトラの高校に転校したばかりで、居残りをさせられた彼女に声をかけた。
なんとか仲良くなろうとコーラを奢るが、ペトラとぎこちない会話で結局何も進展せず。
大人の店であるパブにやって来ると、コーラを飲みながら様子を黙って見ていた。
ペトラをパブに連れてくるが、常連客の機嫌を損ねて背中に小便をかけられてしまう。
最後は個室に入って小便を取ろうとして、声をかけてきたペドラに帰るように言い放った。
・ペトラ(演:グレタ・ソフィー・シュミット)
代表作に『Junges Licht』などがあります。
女子高校生。いつも無気力で無表情。何事に対してもやる気がなくて留年してしまう。
ウィリーに誘われてコーラを飲みに行くと、タバコを吸おうとしてフリッツが火をつけた。
そのせいでフリッツが一方的に憧れてしまい、何も知らないまま彼の前から立ち去った。
ウィリーとパブに行くと、フリッツと再会するも当然のようにまったく視界に入っていない。
最後は一人で帰っている時、フリッツに尾行されるが、アパートが炎上したおかげで助かる。
感想
[個人的な評価]
本作は『第69回ベルリン国際映画祭』にて正式に出品されています。
他に『第69回ドイツ映画賞』でメイクアップ賞、『第11回オトラント映画基金祭』にて助演女優賞、撮影賞、映画音楽賞を受賞しています。
ドイツを中心にヨーロッパで話題となった作品ですが、本作はとにかく「汚い」という言葉が非常に似合います。
今まで最高に汚い絵面だと思っていたのは多くのホラー映画を作ってきたブラジル出身のロドリゴ・アラガォンの作品群でした。
ロドリゴ・アラガォンの作品は共通して小汚い舞台、グロでグチャグチャな汚物まみれの強烈なシーンがインパクト大である。
しかし、本作はそんなグロでグチャグチャな「汚さ」とは違った方向性で、終始に渡って生々しい不快感がありました。
その点では本作におけるオリジナリティがあって、サブタイトルにもなっているフリッツ・ホンカはどんな人間か分かります。
70年代のドイツはこんなにも不衛生で、希望を失った人が多く存在していたと感じさせる生々しい雰囲気はしっかりと伝わりました。
本作は実話をモデルにしている事もあって、基本的に淡々と物語が進んでいき、映画的な緩急はあまりなかったです。
もっとサイコ的な描写があると思っていましたが、あくまでフリッツ・ホンカの日常を映しているから同じようなパターンの繰り返しとなる。
登場する人物は主人公のフリッツ・ホンカを含めて、容姿が非常に悪く、マニア以外にとって不快感を与える一因にもなっています。
ただ、サイコパスな殺人鬼を期待していたのだが、実際は典型的なソシオパスにアルコール中毒が混ざった破滅的な人間でした。
サイコパスの場合、ある種のカリスマ性を与えられる事があるけど、場当たり的な行動しかしないソシオパスでは魅力が足りないです。
フリッツ・ホンカには行動パターンがあっても、そこに何かの美徳が一切なく、ほとんど感情で動いてしまっているからいつ捕まってもおかしくない。
そのせいでラストのオチも非常に弱くなっていて、インパクトこそあっても、似たような展開をしているせいで面白さは今一つである。
やはり、実在する殺人鬼を描いてしまうと、事実に基づいた行動をさせる為に映画的な演出があまり使えないのは痛いと感じさせる。
生々しい不快な汚さとしてオリジナリティがあるけど、物語として抑揚がないせいで期待していたほどの面白さはなかったです。
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